学歴主義の終焉~英語教育イノベーション~

日本独自の英語教育の終焉

読解と文法に偏った日本独自の英語教育がその終わりを迎えようとしている。

2020年の大学入試改革を控えて、日本の英語教育はこれまでの2技能から世界標準の4技能に変わろうとしている。

2技能とは「読む」と「聴く」であるが、実際の入試では「聴く」の比率は20%程度であって、圧倒的に読解重視である。

そして、この読解偏重を補うものとして、さらには採点のしやすさを含めた入試の効率性と公平性を担保するために、

文法という日本独自の試験問題を作り上げた。

カリスマ英語講師として大学受験生から人気の高い安河内哲也氏(一般財団法人実用英語推進機構代表理事)は、

このような日本の英語をスーパーガラパゴス英語と指摘。

そして、一周遅れの日本の英語教育を世界に追いつかせるためにも、2020年の大学入試改革は絶好のチャンスと語る。

安河内氏は100冊を超える受験英語の参考書・問題集を執筆しているが、

「もう直ぐ私の本は一冊も売れなくなるよ」と楽しそうに語るほどだ。

英語4技能とはなにか?

「読む」「聴く」「話す」「書く」の4つであり、バランスの取れた4技能の総合力こそが

求めるべき英語力であると言われている。

この4技能総合力の背景にあるのは、コミュニケーションという考えである。

相手の伝えたいことを正しく理解し、それに対する自分の考えをつくり、

そして相手に自分の考えをわかりやすく正しく伝える能力。

これをOECDが世界的に実施する国際学力調査PISAでは、「読解力」と呼んでいる。

また、文科省が標榜する「新学力観」ともおおむね一致している。

 

グローバル化へ向けた実用的な英語力へ

これまでの日本の英語は極論すれば、入試のための英語であった。

英語という科目の重要性について、「誰でも努力し成果を出せる科目であり、忍耐力、計画力、達成力などを測るには最適の科目である」と語る大学関係者や塾予備校の関係者は少なくない。

まさにセンター試験が作り上げてきた「公平」「公正」「平等」の価値観である。

そして、学力や学歴が日本という狭い国内に限定されている間は、それで都合がよかったのである。

しかし、今や経済活動のグローバル化のなか、職業・雇用のグローバル化が進み、
必然的に教育もその流れを拒むことはできない。

日本の英語は、グローバル化の流れのなかで実用的なツールとして生まれ変わらなければいけないというのみならず、入試においてもこれまでの役割を終えようとしているのである。

英語教育イノベーションの先にあるものは何か

ある時の学力判定(つまりは18歳の大学入試)が一生の評価になった時代の終わり。また、国内でしか通用しない大学入試での得点の意味喪失。

次にやってくる時代においては、学歴という過去の記録ではなく、今何ができるか、どれほどできるかをもっと精緻に評価する、能力検定や有期の資格制度が用いられるように変わるのではないか。

それゆえに、教育は未来を見据えて設計されねばならないし、教育を投資として考えれば未来の成果から判断するのは当然ではないだろうか。

株式会社スタディラボ取締役
横田 保美 Yasumi Yokota
【略歴】元上場教育サービス企業の広報室長、元日本教育大学院大学客員教授。現在は、教育サービスの質保証に関する国際規格委員会ISO/TC232の国内審議委員、岡山県教委や福井県教育研究所の外部アドバイザー、学習塾講師検定主任審査員も務める。